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規格住宅にはない欧米風のデザインや内装が大きな魅力となる輸入住宅。輸入住宅を建てる際には、その価格や取り扱っているハウスメーカーについてはもちろんのこと、輸入住宅の歴史について知っておくと、実際に輸入住宅を建てる際の役に立つでしょう。ここでは輸入住宅の起源、発展をさまざまな観点から見ていきます。
日本における輸入住宅の起源を語るとすれば、その工法である2✕4工法は外せません。
まず、海外で2✕4工法が生まれたきっかけは19世紀にヨーロッパから移住してきた移民によって建てられた、彼らの家の特徴を再現した住まいでした。その住まいを作るための工法がやがて2✕4工法となり、全米へと普及していったのです。
日本に2✕4工法が渡ってきたのは明治初期。当時はまだ一般住宅の建築法としては普及はしませんでしたが、札幌時計台に代表される各地の有名建築のほか、わずかな個人の邸宅が2✕4工法で建てられたのです。
日本国内で2✕4工法が正式に認可されたのは1974年。この時代には、田中角栄元首相の退陣、長島監督の現役引退などといったような歴史的な出来事が起こった年でした。住宅業界内の変化としては、旧財閥系をはじめとする大手の資本家がさらなる戸建住宅表の拡大を目的として、それまでになかった日本独特の企業としてハウスメーカーを設立するという出来事があったのです。
しかし、この時点では建築基準法や輸入規制、輸入住宅に対する誤解などが原因で2✕4工法はまだ普及には至りませんでした。そこからさらに時代が進み、1980年代に入ってからの既存の在来木造住宅やプレハブ工法では満足できなくなった人たちによる輸入住宅ブームが巻き起こる時代になって、ようやく2✕4工法は日本国内に普及していったのです。
90年代後半になると、2✕4工法はマイホームの建設を考える人々にとっての選択肢のひとつとしてすっかり定着しました。新築住宅着工戸数が1993年以降年々減少し続ける中にあっても、2✕4工法による輸入住宅の需要は、一定のラインをキープし続けているのです。
現在多数存在するハウスメーカーの誕生は、東京オリンピック後の経済成長が緩やかになった時代に集中しています。この時代は、それまでの経済成長が減速し始めた代わりに、消費型社会へと時代が転換していったポイントでした。それまでは平屋が中心だった家屋が、2階建てがメインになっていったのもこの時期です。それを反映してか、現実の家屋はもとより、アニメや漫画といったフィクションの中でも2階建ての家が多く登場するようになりました。
このときに生まれたハウスメーカーは、その母体ごとにさまざま形での発展を遂げます。化学工業系の会社を母体とするハウスメーカーは、家造りを「ものづくり」として捉えていました。そのため、住宅建築に対しても独自の工法、素材、施工方法を発展させるという方向でのアプローチを行っています。その結果、化学工業系の会社を母体とするハウスメーカーは、徹底した品質管理と施工管理を強みとするハウスメーカーとして発展していったのです。
大手不動産系、建設系、商社系の会社から生まれたハウスメーカーは、その後に続くバブル経済の波にうまく乗ることに成功し、各社のブランドイメージを定着させることに成功しました。また、バブル経済の時代には的確に立ち回った経営者によって、小さな会社から全国規模の大企業に発展した例も数多くあります。
やがてバブル経済の崩壊を迎えた時代では、やはり多くの会社が倒産を免れませんでした。その中で生き残った会社も、新しいビジネスモデルを構築していかざるを得ない状況となっています。そうした状況下で建築業界に渡ってきた2✕4工法は、大手の資本が手動となって広がっていきました。輸入住宅については中小規模の商社思考の実業家たちによって全国に広がることになったのです。
アメリカから伝わってきた、輸入住宅を建てるための工法である2✕4工法。この2✕4工法を企業としてはじめて導入したのは、材木・合板の大手として知られる永大産業です。また、現在でも2✕4工法の大手として知られている三井ホームもま財閥系ハウスメーカーの代表格と言える存在です。これらのハウスメーカーは、どちらも発足段階から、従来の在来工法との差別化を図るための工法として2✕4工法を採用してきたと考えられるでしょう。
また、事業家側の状況としては、ものづくり的要素以外にも海外から資材を輸入するという商社的要素を持つ輸入住宅は魅力的な事業だったと言えます。彼らにとって輸入住宅は、アメリカという異国の住まいに対するロマンチックな想いと国内で苦労して資材を取り寄せるよりも、コンテナに資材を詰め込んで海外からかんたんに取り寄せることができるという事業的な部分のふたつの魅力を持つ事業だったのではないでしょうか。
明治初期に我が国に渡ってきた2✕4工法による輸入住宅は、今なお一定の需要を持っています。その理由としては、大きく分けて4つの要素が挙げられます。
既存の住宅モデルの枠に留まらず、世界にひとつしかない自分の理想のマイホームを建てようとする人は多いもの。その中でも、従来の日本家屋のイメージに囚われないデザインや内装を持つ住まいとして輸入住宅を希望する層が多いのです。また、極力壁や間仕切りを廃した広々とした空間を求める層が、吹き抜け構造やスケルトン式の階段を持つ欧米式の輸入住宅を建てようとすることも多いのです。
2000年に施行された住宅品質確保の促進等に関する法律の法令によって、住宅には構造、省エネ性、空気環境、高齢者配慮などの性能表示が導入されました。これによってユーザー側の高品質受託へのニーズが高まり、それに呼応する形でハウスメーカーや工務店も輸入住宅を取り扱うところが増えてきたのです。
日本の住宅の寿命はおよそ30年とかなり短く、サイクルを終えた住まいは次々と建て替えられてきました。しかし、資源保護の観点から、頻繁な建て替えよりも何世代もの家族が住めるひとつの住まいが求められるようになったため、住宅としての機能だけでなく耐久性も高い輸入住宅の需要が高まってきたのです。これについては、政府による住宅ローンの金利優遇などの後押しも影響しています。
地震大国とも呼ばれる我が国で安全に暮らすためには、住宅の耐震性は非常に重要です。そのため、高い耐震性を持つ輸入住宅は住宅機能の面でも優れており、高いニーズが集中することになりました。
(2020年3月時点の調査内容です。)
※各社の設計方法について、このサイト内では下記定義づけしています。
・完全自由設計とは、既存プランや既存パーツを組み合わせるのではなく、施工主の要望に合わせて間取りや素材を要望通りに設計・施工してくれる住宅。
・セミオーダーとは、ある程度決められたパターンの中から、好きなものを組み合わせて設計・施工をしてくれる住宅。
・自由設計とは、設備の仕様は建築会社指定になりますが、間取りを希望通りに決めることができる住宅。